誰だ？共産党創設にかかわった女性は？

１００年前、暗黒の時代に党をつくった若者たちのなかには、女性たちもいました。体を壊すまで働き、家では子どもを産む道具に扱われた時代、社会を変えてこそ私は自由になれると、不屈にたたかい抜いた。その信念は今に息づいています。 

はて？日本共産党を作った面々は、堺利彦や山川均ら男ばかりだったような気がするが？？？
女性の党員がいなかったわけじゃない。最も古くからの女性党員と言うと丹野セツが挙げられるが、彼女の入党は28年である。

女の人で党設立にかかわったって、誰だろう？ 

Comments

[1. にそ]

山川菊栄さんとか、幹部の奥さんあたりを「旦那さんを支えた」とカウントしているのか
(でもそれだと後ろの下りと矛盾しますね…女が男を支える構図を間接的に認めることになるので)
それとも出てきていない誰かがいるのか…
まあ、田村さんのことだし、間違って覚えてたんだったりして…
そもそも歴史から云々よりは今の姿勢をちゃんと語った方がいいとは思いますけれどもね

[2. KM生＠管理人様]

ご指摘の丹野セツは、初代共青（民青の前身）委員長川合義虎と共に活動していますた。川合は1923年関東大震災に際して（災害に付込んで社会不安を煽る可能性のある）不穏分子として虐殺されますた。ということは、（党員かどうか不明だが）1922年党創立時点で党周辺で活動していたのはたすかです。
蛇足ながら、丹野セツは晩年に除名されて日本共産党行動派へ。その他日本共産党創立者の妻達に（22年当時の党籍は不明だが）は、徳球夫人（日中両国共産党決裂時に除名）や野坂夫人（野坂除名以前に党員として逝去）もいますた。

[3. KM生＠訂正]

徳田たつが徳球と結婚したのは終戦直後ですた。失礼しますた。

[4. 太宰ファン]

日本の社会主義運動ですが、伊藤野枝とか菅野スガとか、無政府主義とかの方面に勇敢な女性が多かったイメージで、むしろ、日本共産党ができてから、女性の活動家は後景に退いたという印象があります。女性活動家はむしろ社会党系（労農派）の方で目立ってたのかかな。がちがちの秘密結社組織では、女性は登用されなかったということか。ハウスキーパーみたいな扱いが多かったのか。
女性活動家という点で日本共産党は欠点があったとみるべきなのでは。

[5. ハスカップ]

そういう党員がいたのなら、当然実名で言及してくるし、党史などにも出てきて皆さんご存知なのでは？
という時点でお察し。

田村も言葉が軽いね。

[6. KM生＠ハスカップ様]

党創立時に党や周辺にいた女性は、（戦前戦中の時点で獄死したり自殺したものを除いて）大部分戦後に除名されたり、（除名はされなくとも）野坂龍のように公然と名前を出せない者が大部分ですからねー（＾＾）。

[7. TAMO2]

阿倍野でたつみコータロー氏が演説してました。
上手いですね。

で。
ASEANを例に「話し合いで解決を」と言ってるのには苦笑いしか出ませんでした。

ビラを配ってる女性に「ASEANは反共国際組織ですよ？」と言ったら、「そうなんですか！」とあっけらかんと。まあ、今や日本共産党は共産主義はなく、社民主義と思っていますが、何というか。

[8. TAMO2]

場所間違いすいません。

[9. SATO]

　マジレスすると、この正解は山川菊栄で間違いありません。第一次共産党結成（1922年）の理論的中心になったのは山川夫妻であり、当時の日本に社会主義の立場から女性解放理論をまともに論じられる女性は山川菊栄しかいなかったといっても過言ではないほど、理論的に突出していましたから。

　第二次共産党には山川均ともども加わらなかった山川菊栄の名前を出すと共産党的には不都合なのでこんな姑息なゴマカシをして、名前を隠しているんですよ。

　山川菊栄については、つい最近、鈴木裕子著「忘れられた思想家 山川菊栄 フェミニズムと戦時下の抵抗」（梨の木舎）という伝記も出ているので興味のある方はお読みになってくださいね。

　ついでにちょっと面白い話を一つ。「特殊部落一千年史」（今は「被差別部落一千年史」のタイトルで岩波文庫になっている）を著した高橋貞樹の伝記「部落史の先駆者・高橋貞樹―青春の光芒」（沖浦和光著、筑摩書房）に書かれているんですが、男女別学だった当時、未婚の若い男女が社会問題についての本をいっしょに読み、対等な立場で討論することができたのは、山川夫妻の主催していた勉強会くらいしかなかった、ということで、ここで何組もカップルができたそうです。
　これも公式の共産党史などではあまり語られることのない事実ですね。

[10. KM生＠SATO様]

貴重な情報を有難うございます。
山川夫妻は日共党史では（解党主義者という形で）否定的に扱われていますね。初期党史の時期は大杉栄とのアナボル論争など、解党後も（復党はしなかったが）日本の社会主義運動史上重要な役割を果されますた。
創立時メンバーの1人高橋貞樹は、転向したこともあり、これまた党史では否定的に扱われていますね。戦後も復党しなかったのでは？

[11. KM生＠訂正]

失礼。
高橋貞樹氏は、戦中病死ですた。

[12. もっく]

党創立時の女性党員は、近藤真柄ではないかと思われます。堺利彦の娘で当時は堺真柄。共産党創立時に入党し、同じく創立メンバーだった高瀬清（のちに社会大衆党に移る）と結婚しています。のちに高瀬と離婚、アナーキストの近藤憲二と再婚しています。高瀬清も真柄ものちに共産党を離れて社民やアナーキズムに移ったので、共産党としては、あまり積極的な評価はしにくいのでしょう。

[13. SATO]

　近藤（堺）真柄は、最晩年に至るまで山川菊栄と親しく、菊栄の最期を看取っていたと思います。
　三田村四郎の内妻だった、九津見房子（「九津見房子、声だけを残し-斎藤恵子著　みすず書房」「評伝　九津見房子~凛として生きて~　堀和恵著　　郁朋社」）などもこのグループでしたね。
　いずれにせよ、当時、社会主義女性運動を理論的に指導できたのは、山川菊栄だけだったというのは、間違いのないところです。
　今の日本共産党にとって人物が評価に値するかどうかは、生涯にわたって忠犬のように党に忠実であったかどうか、ということだけですからね。こういうセクト主義丸出しの態度で広く国民の支持を得ようとするなど、片腹痛いというしかありません。

[14. KM生＠SATO様]

随分と戦前党史に詳しいですね。
＞三田村四郎・久津見房子夫妻
三田村氏は戦前転向しているので、当然党からは評価されていない。戦後も復党しようとしたが追出され、反共労働運動家に転じた。久津見氏は戦中は獄外活動していて、ゾルゲ事件に連座した。しかし生涯三田村に連添った。
＞セクト主義丸出しの態度で広く国民の支持を得ようとするなど、片腹痛いというしかありません。
党（というよりはむしろ）現指導部にとっての都合でしか、人を評価できない。この偏狭さ、狭量さ！
今NHKETV　100分で名著「安部公房　砂の女」を視聴中です。正に安部公房氏が除名されたのも、こうした「蟻地獄のような党」に見切りを付けたんでしょうな（＾＾）。

[15. ASA-YASU]

みなさん　こんにちは、
6月12日の産経新聞１面に佐藤優氏が
女性の権利確立絡みで中北氏の新書を
引用してツッコんでいますた。
そこで取り上げられていた
　　　福永(波多野・是枝)操氏
はどのやうな人物だったかご存知ですか？

[16. 太宰ファン]

ASA-YASU様

貴重な情報ありがとうございます。
wikiに福永操、ありました。
著書に「ある女共産主義者の回想」。。。
アマゾンで見ると古書のカバーの惹句「根強い女性差別を構造化した<党>の退廃せる実像を描く」だって（泣）。
掘れば掘るほど。。。。無尽蔵。

[17. SATO]

　福永　操に関連して、石川　捷治　九大名誉教授の「社会主義者における『性』と政治−日本の1920〜
30年代を中心として」という興味深い論文が見つかったのでご紹介しておきます。
　グーグル、ヤフー等の検索エンジンに論文のタイトルを入力すると見つかると思います。

[18. busayo_dic@管理人]

>>13
堺真柄や山川菊栄は、党創設者の親族で近しい立場だったのは間違いないですが、党員だったかについては今のところ確認できる資料を知りません。
確認できる資料などご存知でしたら、教えていただけると幸いです<(_ _)>

[19. にそ]

一応ウィキとかの情報ですが
女性党員だと野坂龍さんの1923年入党より前の人を見つけられませんでした
(鍋山歌子さんって入党されてたんですかね？)
丹野セツさんは2次から入ったので間違いないですよね？(で、それが1926年と)

仮にいたとしても、こういうのに持ち出すのって
皆様のご指摘の通り、何だかご都合主義的ですよね
何か感情的に反発が…

[20. くじょうの会堺支部＠テキトウナこと言うな！]

皆さんご承知の通り、日本共産党は “コミンテルン日本支部” としてスタートしました。

ひょっとして、日本支部の創設にあたり、コミンテルンの（海外の）活動家に女性がいるのかと思い、調べようかと思いました。

・・・しかし、田村智子氏など理論の無い人物。
“コミンテルン” の言葉自体知らないと思い、調べるのをやめました!(^^)!

[21. KM生＠くじょうの会堺支部様]

＞田村智子氏など理論の無い人物。
＞“コミンテルン” の言葉自体知らない
田村智子に限りませんが、昨今の日共国会議員「我党は結党以来一度も暴力革命を唱えたことはない」などと恥かしげもなく宣っていますからねー（＾＾）。
小林多喜二くらい読んでから物言え！この馬鹿！

[22. busayo_dic@管理人]

>>17
福永操は、名前は存じ上げませんでしたが、運動史研究に書いてあったのは読んだ記憶があります。あの本は共産党を離れた人が書いているんだと思いますが、党員のままで運動史研究に出てたんですかね？だとすればスゴイ方ですね。

[23. SATO]

管理人様

　意外と簡単に証拠文書が出てきたのでご報告します。もちろん、発見なさったのは、私ではなく、加藤哲郎　一橋大学名誉教授、場所はモスクワのロシア現代史資料保存研究センター・コミンテルン・アルヒーフです。
　大原社会問題研究所雑誌492号（1999年11月）のPDF版が法政大学　大原社研のホームページで読めますが、そこに「史料紹介　第一次共産党のモスクワ報告書（下）」がありますね（国立国会図書館　デジタルコレクションでも読めるようになっています）。
　資料25は1923年の第一次検挙後の佐野　学執筆の報告書ですが、この文書に「第一　共産党の近況　（四）各部委員会　（3）婦人部」　という箇所があり、ここで婦人部の委員長が山川菊栄（1890年生）（これは当然でしょうね）、平の委員が（帯刀）貞世（東洋モスリン争議に参与、戦後は共産党系の新日本婦人の会代表、1904年生）、（堺）真柄（1903年生）で一般の党員は主にフロント組織の八日会（赤瀾会の後身）に参加していたということがわかります。
　ところで、平委員として関与していた男子、高野とは誰のことでしょうか？
　帯刀、堺両氏の年齢（現代なら大学生相当）から推定すると、のちの総評事務局長　高野　実（1901年生、当時早大生）じゃないかと私は思います。親戚のお兄ちゃんみたいで話しやすいでしょうし、山川委員長も仕事を頼みやすいですからね。
　戦後、労働組合員だけでなく、妻子をも巻き込んで家族ぐるみの「ぐるみ闘争」を展開した、高野
の原点は案外この時期の婦人部での活動にあったかと思うと、こちらもたいへん興味深いです。

[24. SATO]

　上の訂正です。大変失礼いたしました。「貞代」
というのは、帯刀貞代とはまた別人で、仲宗根貞代さん（仲宗根は結婚後の姓、1895年生）という方でした。

　この方について何か記事がないか、ネットで検索すると、「沖縄は解放されたか　革命運動に身投じた２人の夢　本土復帰４９年の日に」という47ＮEWS（全国新聞ネット）2021年5月19日付記事（江刺　昭子　記）という記事が見つかりましたので、ご報告させていただきます。
　
こちらが正しいとすると、高野＝高野実という私の説も怪しくなってしまいますね、どーもすいません<(_ _)>。
　まあ、高野実も晩年、もう1回共産党に入党して除名される、という結構波乱の生涯を送っているので、偶然正解しているかもしれませんが、そこはよくわからない、ということで・・・。

[25. busayo_dic@管理人]

>>23
ありがとうございます。
高野実が１次共産党にいたのはこちらも把握しています。逮捕されてから労農派に転向。
浅沼稲次郎もいました。こちらは解党で党籍自然消滅ですが、教えていただいた資料にもある軍事研究団事件の時にリンチを受けてますね。

[26. 太宰ファン＠福永操氏の本]

中北本でも取り上げられていた福永操「おんな共産主義者の回想」、ネットで取り寄せて読了。1920年代からの戦前の党活動の様子がリアルに描かれ、驚愕。ご本人は、裁判官の娘で、東京女子大の寮で東大の新人会の人たちをチューターに読書会をはじめ、入党、党員と結婚、ハウスキーパー＋レポのような活動、1928年3.15で逮捕、その後、入獄、病気出獄を繰り返すも、転向を拒否。
本書での著者の魂の叫びは以下の下り：

日本で女は「性別奴隷」だった。このみじめな女たちが人間としての人権の自覚にようやく目覚め始めたばかりの段階で、自主的に生み出した婦人大衆政治団体である婦人同盟を、その出発点において、男どもの性的支配権にとって邪魔だとばかりに、日本共産党の最高指導部が圧倒的専制権力命令で踏みつぶしたのである。そして、戦うべき戦線の持ち場をなくした女たちを待ち構えていて、ふたたび従順な奴隷と化したのが、共産党のハウスキーパー慣習だった。

著者も、指導部から党員との結婚を何度も説き伏せられて受けた模様。結婚すれば、夫の活動内容には一切関与させず、何も知らされないレポ活動（伝言使い走り）で酷使。友人や知り合いの女性党員の多くがそういう道へ。婦人運動は、階級闘争より下位の位置づけで事実上撤退させられた。

この本、硬い本じゃなくて、いいのかというくらい、いろんなゴシップが書かれていて、おもしろかった。

[27. 太宰ファン＠福永操氏の本（その２）]

福永氏の告発の抜粋：

＊＊＊
東京女子大の同級生で研究会員であった森田京子さんと小松ちづ子さんは、...ハウスキーパーとして逮捕され、酷い拷問を受けたあげく起訴され、市谷刑務所に送られた。市谷刑務所では、1928年末に志賀多恵子さん（女子大の先輩）が拘禁性ノイローゼで発狂し、執行停止。...翌1929年６月ごろ、伊藤千代子さん（女子大の後輩）が夫の浅野晃氏の転向のショックで突然発狂して、松沢病院へ送られ、肺炎のため死んだ....

ハウスキーパーの「仕事」は、当時の新聞の三面記事として好題目にされ、...侮辱を与えた。そして共産党の男幹部たちの大部分は、同情を寄せるどころか、それが「プチブルの女ども」に対する分相応の待遇であるかのような軽蔑の態度で、振り向きもしなかった。...自分が尊敬し信頼していた同志や指導者からうける蔑視は、精神的にひどい打撃であった。...

私たち女子学生の研究会運動が生んだ「歴史的成果」は、ハウスキーパーの要請所ということになってしまったかと思う。「女子学連」の生成当初からの関係者であった私は、このことを考えると、心臓を逆なでされるような痛みを感じて、「女子学連」という名を聞くこともイヤであった。...
＊＊＊
（抜粋終わり）

当時のソ連の方針として、婦人解放運動を階級闘争よりも下に位置付けるものがあり、共産党として、婦人の政治運動団体創設から手を引いてしまった経緯がある。その結果、婦人運動はもっぱら労農派など社民系列が推進した。共産党の女性党員（特にインテリ層）は、ハウスキーパー＋レポ（使い走り）に忙殺され、多数の悲劇が生まれた。もちろん、弾圧する側が悪いのだが、一方で、政治的な議論や情勢議論抜きに本人の思想的成長などお構いなく、奴隷のように党への奉仕に酷使された女性たちは、運動から離れて二度と戻らない人が多かったそうです。発狂や自殺が多いのもそれも原因だろう。

[28. 太宰ファン＠福永操氏の本（その３）]

この本、男性糾弾の書ではなく、女性党員の醜い点も指摘している。

今でもあるけど、有能な男をものにして自分も（党的に）のし上がるってのを実行する女性。著者の大学の先輩、志賀多恵子氏。学生時代、新人会の東大生・林房雄と付き合っていたが、いきなり志賀義雄に乗り換えた。

「多恵子さんは...豊艶な美人で..京人形のようだった」「林房雄は新人会の貧しい学生の中でも一番貧乏な学生」「志賀さんは山口県の名望家の一人息子で」「月200円くらいの仕送りでぜいたくな生活をしているとの噂」「志賀さんは、共産党のビューローの関係者で、東大の学生より一段上の立場」「新人会の仲間の悪評が全部多恵子さんに集中された」

志賀多恵子は、有能で見てくれの良い党員（是枝）と結婚した著者に、いろいろ嫌がらせをする。是枝が「多恵子さんは君にジェラシーを持っているようだから気をつけろ。彼女の前で私に話しかけるな」と警戒。

その後、3.15で志賀義雄も多恵子も著者も逮捕、裁判闘争は仮出所の多恵子が仕切るのだが、獄中で佐野・鍋山が転向宣言を発すると、多恵子は同調、転向しない志賀を見捨てて離婚。その後、鍋山と婚約しようとする（驚愕）。が、鍋山の懲役が思ったより長くなることを知ると中止。

多恵子氏、戦時中は、親のコネで大蔵省調査局に勤務（転向したので）。町で、1940年代に、出獄後の著者と会った際に、著者が戦局の成り行きを率直にしゃべったところ、公安部に垂れ込まれて、著者のもとに公安が来たらしい。

で、戦後、今度は、志賀義雄に近づき復縁。「多恵子さんは、毎日厚化粧で着飾って、志賀義雄氏のそばにべったりついて離れなかった」「志賀氏の復縁には徳田氏たちが猛反対したが、志賀氏自身がその気になった」「志賀夫人として毎日党本部に出てきて、はばを利かせた」「若い連中は陰で「淀君」とあだ名をつけて恐れている」

今もある話ですね。

[29. 太宰ファン＠福永操氏の本（その四）]

著者は、逮捕後、ようやくハウスキーパー的任務から逃れて、仮出所や病気出獄期も、語学などを活かした党活動に（1930年代前半）。まず、裁判闘争の速記係（佐野・鍋山の転向前の第一次の裁判の記録用）、つづいて翻訳部の細胞（海外雑誌から左翼雑誌用記事を、キャップは村田陽一氏）、続いて、中央情報部（キャップは風早八十二氏）、その後、アジプロ部。キャップは宮本顕治（1933年９月）

「私は宮本顕治氏と会ったのはその時が最初である。宮本氏は1928年に東大経済学部に入学したが、在学中は新人会などの学生運動にかかわらなかったから、逮捕の経験もなかった。1931年に卒業して、5月に入党した」「まだ駆け出しの「文芸評論家」として知られていただけ」「作家として名高い中条百合子氏の愛人として新聞等で評判だった」「宮本氏は体格が大きくて、丸々と肥っていて」

週一回、宮本氏との連絡を欠かしたことはなかったが、1933年12月26日には約束の場所に現れなかった（その日の午後に逮捕されていた）。その後、アジプロ部長は、秋笹氏、袴田氏に交代。

「袴田氏と連絡を取ったのは、ほんの数回だった。そして、2月20日には、自分の住居に外から帰ってきたところ、待ち構えていた数名の警官に逮捕された。この住居は、引っ越して間もない家で、だれにも知らせていなかったから、どうして警察に知れたか不明である」

その後、「逮捕された党員であふれかえる渋谷警察の留置場で.....３月か４月に新しく入った人が「ねえ、袴田はスパイだってよ」と囁いた....（袴田は）数回会って簡単な話をしただけだったが、官僚主義的な態度でいけ好かない感じの人間だと思っていた」「こうして「袴田スパイ説」は留置場でたちまち広がった」。。。

[30. busayo_dic@管理人]

>>29
福永さん、私がハウスキーパーの件でホントにあったのかと疑問の根拠にしている運動史研究の該当記事にも参加しているんですよね・・・
図書館行って読み返さないといけないな。

[31. 太宰ファン]

管理人様

この本、情報量が多いです。戦前の活動って、盛り上がったのは、第二次共産党からほんの数年のうちなのですね。福永さん、その間を全部経験しているようで、多彩な登場人物で、貴重な話が多いです。熊沢光子の自殺の話しも少し触れています。

[32. 太宰ファン＠福永操氏の本（その５）]

福永氏が学習会を始めたころ、福本和夫氏を講師に一度だけ招いている。

「福本氏は、山口高商教授で、もともとは社会主義運動に無関係な人であったが...留学中に関心を持つようになった...1924年暮れ以降、毎回のように雑誌「マルクス主義」誌上に難解な論文をのせ...」
「評判の福本氏はどんな人か、顔を見たいという好奇心で尋ねた...菊坂ホテルで話を直接聞いているうちに、おやおやと思った。...偉そうな気取った衒気ふんぷんの人柄のように思われた」
「読みにくいスタイルの福本論文を読むより、そのよりどころであるマルクスやレーニンの著作そのものを読む方がはるかに読みやすいと思った」

福本氏の怪しからん行状も告発されている：
志賀夫妻の逮捕後、福本氏のハウスキーパー的な世話を「女子学連」の数名がかわるがわるしていたが「そのうちの中村恒子さんは日本女子大の会員でも新しい人で...毎回、念入りにお化粧をする人で...福本氏は彼女に目をつけて急速に親しくなった...党の命令で大阪に派遣される際に、中村さんを連れて大阪に着くと、まだ何も活動をしないうちに逮捕された...中村さんも逮捕され、女子学連関係をべらべらと全部しゃべってしまい、目白女子大と東京女子大の主な研究会員たちが軒並み逮捕され、退学処分となり、「女子学連」は壊滅状態になったという」
「あの時期は、福本氏が中村さんを連れて新婚夫婦気取りで西下するような時節ではなかった」「そのようなふまじめさに福本氏の人柄が表れている」

[33. 太宰ファン＠福永操氏の本（その６）]

「1925年秋の、一番深い印象を残した思い出は...産労（産業労働調査所）へたびたび出かけたことだ...日比谷公会堂の向かいの..古い壊れたようなビルの二階の一室だった...施設も維持費も野坂夫妻の骨折りと聞いている...懐かしい記憶として残っているのは、たぶん野坂夫妻の人柄が、温かい空気のようにその部屋に漂っていたから...その人柄を好きになった...私はお竜さんの声が特に好きだった」

「私は鍋山夫人の森井歌子さんと刑務所の待合所で初めて顔を合わせてから非常に親しくなった...「歌ちゃん」「みさちゃん」と呼び合うようになり、やがて...ほとんど姉妹のような、共同生活に近い状態になった」

「歌ちゃんは、変名で子供服の販売員になり...月30円くらいの給料だった...歌ちゃんは幼少から全く身寄りがない孤児だった...鍋山への差し入れの一切の世話をするばかりでなく、鍋山の大阪のお母さんにもときどきお小遣いを送金していた...歌ちゃんは後年...モデルで稼ぐほどの美人であったが、浮いた噂一つなく、鍋山への奉仕は最高に愛情深いものだった」

「鍋山の転向後、歌ちゃんはすべての古い仲間たちから顔を背けられ...それでも鍋山への差し入れその他変わりなく続けていた」

（前期のように多恵子が志賀から転向した鍋山に乗り換える騒ぎで）「歌ちゃんは憤慨したが...多恵子さんはお金持ちだから、鍋山の老母の面倒を見てくれるというならと、歌ちゃんは自分が身を引くしかないと観念した」

（その後、多恵子が心変わりしたのち、釈放された鍋山の身元引受人がいないので）歌ちゃんは承諾して、開業した洋裁店の二階に受け入れた（戦時中、著者もそこに勤務）。

[34. 太宰ファン＠福永操氏の本（その７）]

著者は1934年2月に再逮捕されたのち、1934年10月に市谷刑務所に移送、その数か月後に隣の房の熊沢光子が自殺。

「私は熊沢さんとは党の中でまったく無関係で、顔も知らなかった。彼女の名も「リンチ事件」発表の新聞記事の中で見ただけで、よもや隣房だとは思いもよらなかった...自殺を知った瞬間、アッと驚いたが...少しの感傷もなく、ただうまくやったと驚嘆するばかりであった...女看守部長の休日であったような気がする...この看守部長は質実勤勉で、こまかいところに気を配って目の届く人間だった。熊沢さんは、この看守部長の休みを見定めて決行したのであろう」

「1936年の夏ごろ、この隣房に新しく入れられた女があった...当番看守と立ち話をしているところを見ると、おや、と思うほどの美人だった...「水商売」だろうが、口の利き方はあまり上等の方ではない...この囚人は、毎夜、大きな声でうなされていた。その寝言に男の名らしいのを呼んだりした...うなされるのはたいてい殺人犯に決まっているから、なにか情痴事件であろうと思った。おかしいのは、その女が隣房に入って以来、ふだんめったに顔を見せない「次席」（副所長）がたびたびやってきて、覗き込んで長時間話をしていくことだった...」

著者は、その後病気出獄後、1940年に栃木刑務所に再入獄、そこでまた、この「お定」という女が隣房だったそうな。。。。

[35. 太宰ファン＠福永操氏の本（最終回）]

本書では、著者は、なぜ党幹部たちは簡単に転向したのかに拘り、考察している。コミンテルンにより「天皇制打倒」を掲げてしまったが、それについての党内の議論や党員の理解が充分であったかどうか。また、コミンテルンの指示で、天皇制をロシア帝政と同じ「封建的絶対主義」と規定したのが間違いではないか。

「戦後、多数の国民国家が生まれた..これらの後進諸国はいづれも（大急ぎで生産力を開発して文明化するため）専制的「独裁的」な政治組織で軍事的色彩の強い政府を作っている...日本の天皇制国家は、現代の多数の後進資本主義諸国家の独裁的政治体制の先駆であり先例であるといえよう...天皇制国家の性格は決して「封建制遺物」ではなかった」

つまり、戦前の天皇制は、後進資本主義国が急速に近代化を成し遂げるための開発独裁型国家の先駆け（ナチスドイツも同類）、戦後のアジアの独裁国と同類ということ。世界でも最新の後進国型の統治体制であり、単に封建的遺物では片づけられない。

以下私の意見。これは1982年の本だが、その後のソ連・東欧崩壊を考えると、実は、ソ連・東欧も戦前の日本の天皇制国家と同じ「開発独裁型」国家（全体主義で生産力の増強を図る）だったといえると思う。

戦前の日本とソ連を比べると、天皇が共産党に変わるだけで、社会発展史的には同じだったのだ。今の中国、北朝鮮みれば納得だ。ということは、戦前の日本共産党、「全体主義」から「全体主義」への革命を唱えた、トンチンカンな党だったと言われても仕方なかろう。