SEALDsの中で今後について意見が分かれていて、一部学生が下手すりゃ離反か?といった観測的意見もちらほら聞かれるようになった。

ぼくちんとしては、離反するのが出てくるとしても衆議院可決の一週間、二週間してから話が始まって、表面化するのは早くても八月に入ってからと踏んでいるのだが、この手の離反関係の対処ノウハウを持つ人は運動界隈にはほとんどいないと思うので書いておこう。

別に学生運動に限ったことではなく、若者が集まって作ったベンチャー企業などでも同じだが、組織が分裂するときによく路線対立が理由に挙げられる。表面的には確かにその通りなのだけど、路線対立には二通りのパターンがある。

一つは、純粋な路線対立で、運動がうまくいかない、ビジネスがうまくいかないといった時に、次何をするのかで純粋に対立する。ベンチャーなら、獲得したい顧客の違いで「B to C派」と「B to B派」の対立とか、SEALDsならたとえば、「右翼からも支持される運動やりたい派」VS「支持母体は左翼だけでいい派」と対立するとか、そういう今後の方針にかかわる対立だ。
こうした純粋な路線対立では、「じゃ分かれましょう」ということで両派が友好的に分かれることは可能だ。会社と違ってSEALDsは財産を持っていない(と思う)ので、財産の配分に関わるトラブルも起きないだろうし、純粋左翼のみ支持を得る組織と、右翼にもウイングを伸ばす組織に分かれるなら、以前ぼくちんが書いた組織拡大策と同じ効果が得られたりもするだろう。

昔の左翼運動は、この路線対立で相当なことをやっていたけど、今のSEALDs界隈のノリだと価値観が全然違うので、組織の覇権を争うようなことは起きないと思う。考えが違えば組織内でどうこうするより、さっさと辞めていく人が多いとぼくちん考えてる。

その意味で、一部の人がおっしゃる「いずれ内ゲバに発展するぞ説」にぼくちんは与しない。問題は第二のパターンだ。

第二のパターンは路線対立の皮をかぶってはいるが、実際は色恋沙汰のからんだ対立に陥った場合。これはとても面倒なことになる。ベンチャー企業なら企業内政治がはびこるのと同様の弊害が、より深刻に出てくる。

企業内政治という言葉にピンとこない人は、勉強するなら今ならこれが1番手に入りやすいと思う。
HARD THINGS
ベン・ホロウィッツ
日経BP社
2015-04-17



色恋沙汰は、普通、組織のトップは起こさない。てか、起こせるほど精神的に余裕がない。マジに24時間臨戦状態、マジに日々是決戦状態だから、頭の中にそういう雑念が入ってくる余裕がない。

ところが、トップの下にいる面々は、そこまで精神的に追い詰められていないので心に余裕がある。で、組織内で恋愛関係になる者も出てくる。それは別にかまわない。問題は、運動が短期決戦ならまだしも、長期戦になると彼女といちゃいちゃする時間が欲しくて、恋人が組織に割く時間を奪ってしまおうとする輩が出てくることだ。

それが、組織的に価値の低い人が対象になるときは無視もできる。しかし、価値の高い人がそんな異性に惚れられると、恋人と過ごす時間が欲しいと考える異性が、本音を言えないものだから組織への嫌がらせとして路線対立を仕組んで内部をかき回すことがあるのだ。(本気になって詰めれば最後には白状するけど)

人材が豊富なら、そんな恋人を持ってしまった人を一線から外して別の人を充てることもできるが、そうでない場合は、だましだまし使わざるを得なくなる。で、たいていどこでも頭数はいても有能な人材は不足しがちなわけで、だましだまし使わざるを得ないこっちの立場が弱いとなると「敵」はますますつけあがり組織全体が変調を来すようになる。

周囲は当然そういう奴を嫌うが、色恋の渦中にいる者には、そんなことなどお構いなしに暴れる。で、そんな輩の恋人本人も、そんな恋人の行動に眉をひそめるのだけど(だから有能なのだ)、二人きりになったときに熱いささやきを受けてたりするもんだから、なかなか別れるところまで決断できないんだなこれが。

なのでそういう輩が出てきた場合は、たちの悪い恋人を持ってしまった人をやむなく、すみやかに切るのが組織的に最善となる。のだけど、たとえ代わりになる人材が豊富にいても、本人が悪いわけでもないのに組織的に切るのは心痛むし、それまでの貢献度合いを考えれば、なかなか冷徹な処理はやりにくい。冷酷に徹するのにためらいが出るから、処理が遅れて組織がけっこうなダメージをうけて、これ以上はリーダーもストレスに耐えられないとなってから手を打つことになりやすいのだ。

SEALDsの場合はトップがいない、集団指導体制を取っているが、集団指導体制はトップダウンよりも意思決定が遅れがちな形態でもあるわけで、その点、要警戒である。