太平楽が大好きな日本のバカサヨ

 さて。前掲書において、元上等兵の小泉健二は、こう述べています。

 

 

「ソヴェト人の生活は、すべてが健康的な明るさにみたされている。作り笑いの影が少しもない。みんなが心からほほえんで暮らしている

 

「ソヴェト三十年の歴史は、既に新しい型の人間を作ることに成功した。世界史上最初にあらわれた人間の型である

 

「革命的な歴史観・社会観がその人間の根底を常に強く流れているのだ。それは確かに新しい社会的教育の成果である。そしてそれが三十年という歴史の時間的な内容に裏づけされて、現に社会を推進させている大衆勢力となつたところにソ同盟の力がある

 

「国家の機構がユダヤ人というものゝ内容を変革し、さらにそれをカードルにまで発展させたのである」

潮流社『生きたソ連を見る』

 

 

カードルとはガス供給装置のことです…アタマ痛え。ナチスかよ、こいつら。もちろん、真偽はともかくユダヤ人を殺した数で言えばヒトラーよりもスターリンの方が多いという説もありますので、このユダヤ人に対する言及を見て、すげい薄ら寒くなってしまいました。まあ、この箇所を書いていた時期は真夏でしたので、節電には効果があったのかもしれません。熱中症怖いもんね。

 まだまだあります。小泉によると「人間の価値は実に社会の発展に寄与する程度によって決定される」のだそうです。さらに彼はこういってのけます。「社会主義国の乞食は自分からとび出した者である。国家の与える仕事に満足しない者である。いや頭から労働を回避する怠け者なのだ」ここまでくると、片山さつきちゃんみたいに生活保護を叩いて人気取りをしているひとたちとほとんど区別がつきません。

 帰還者の中に、こういう感想を抱いてきた連中がそれなりにいたことは、記憶されなければなりません。しかし、それを素直に受け入れるわけにもゆきません。場合によってはマインドコントロールも疑う必要が出てきてしまいますし、それを疑うだけの理由もそれなりに存在するからです。

 

 なお、共産圏のマインドコントロールにつきましては、法政大学出版局『洗脳』やみすず書房『人間改造の生理』などの専門書がありますし、ソ連についてであれば『スターリン批判後のソ連政治と人間改造―日本人抑留者の体験・報告 (1958) (シベリヤ叢書〈第10)』などといったすぐれた研究書もあります。機会があればぜひご一読をオススメいたします。

 そもそも毛沢東自身が「帝国主義者は、決して刀を捨てようとするものではなく、また、決して仏になれるものではない」(毛沢東『幻想をすてて、闘争を準備せよ』)とも言っております。そうなりますと、かつて全世界を敵にまわし、神風特攻隊、玉砕をも厭わなかった日本人の牙を必死こいて引っこ抜こうとしたり、あわよくば飼い慣らそうとした連中の立場も理解できるのかもしれません。

 もちろん、かつて戦時中はさんざん「米英撃滅」をアジっていた『朝日』には、そんなソ連を賛美していた新聞記者というのが案の定おりました。そのひとり畑中政春によると、ソ連とは

 

 

「ソヴエトの内奥……資本家や地主というものがなく、誰も彼もただ働くことによつてのみ食ふことが出来る労働者と農民の国。一七〇以上もある雑多な民族が寄り集ってをりながら、民族と民族は血以上に濃い同志愛によって固く結ばれてゐる国。婦人は家庭でも職場でも男子と同じやうにものがいへ、同じやうに働いてゐる国。結社の自由はありながらは共産以外にはどんなも存在しない国」

[時局月報社『ソヴエトという国』(1947/11/15)]

 

 

なのだそうです。

 少し脱線しますが中国ですと、相手を罵倒する際「おまえはめくらか!」(外文出版社『劉文學』など参照)と罵倒する場合がありますが、中国人でなくとも思わずそう叫びたくなってしまう駄文を発する新聞記者というのも「『朝日』じゃ仕方ねーかー」とドヤ顔で言いたくもなる…じゃないや、今となっては驚きです。いかなる意味においても朝日新聞社へのテロを容認する気にはなれませんが、まあ「株を非公開にしといてよかったね」とか、イヤミのいくつかは言いたくもなります。

 

 あとはこれこれまた少し脱線しますが、『朝日』は中共の洗脳を否定していませんでした。本紙論説委員新垣英雄は

 

 

「もちろん新中国では「人間改造」とか「洗脳」(ブレーン・ウォッシング)とかとかいう言葉があるように、人間の作り直しが徐々に行われているのでしょうが…」

[『週刊朝日緊急増刊 中共見たまま』(1949/03/28)]

 

 

などと、かなり能天気なことを言っています。

 これはソ連に限らないのですが、日本の左翼には、科学より思想を上位に置く傾向が、現代に至るまで続いていることも指摘しておく必要があるかもしれません。だからこそ「バカサヨ」と呼ばれてアタリマエと言いたい次第です。かかる害毒については、ルイセンコ学説を例にとって言及するのがよいでしょう。

 ただし、こういった発言の少なからぬ部分は、ソ連による領土強奪などから起こった悲劇です。心ある日本共産党員の方が、もしも本書をお読み頂いたのであれば、不破哲三の労作、新日本出版社『スターリンと大国主義』くらいは読んで頂きたいと考えています。入門書としてはすぐれています。よろしければどうぞ。いや、いい本ですよ(笑)