【辞書によると?−3】

 産業革命というと、世界史で学ぶのが、ニューコメンが発明し、ワットが改良した蒸気機関を思い出す人が多いですね。近年では、IT革命もその一つでしょうか。流通革命というのは産業革命の一部と小生は思います。産業革命が起こす展開は以下のとおりと考えます。ある革新的な技術――最近では破壊的技術という言い方もしますね――が広まることによって、それまでと比較して、圧倒的に安価かつ大量のサービスや財を提供すること。そして、そのことを通じて社会の在り方を変えてしまうこと。すなわち、「社会の在り方を変えてしまうこと」なので、これは社会革命の一つだと考えていいと思います。上の『共産党宣言』の文章の中では、生産手段と交通手段の発展に当たるでしょうか。社会革命は、漸進的でもあり、急激――場合によっては断絶と言いたい現象もある――でもあります。そしてこの革命は、下部構造の革命です。

 

 それに対して、上部構造の革命は? 『共産党宣言』では、「爆破」という言葉が使われています。過激ですね。封建制度では、例えば西欧では王権神授説に基づいた王制ってのは、権力を維持し続けることそのことが自己目的化していて、自分たち以外が政権に就くことは想定されておらず、それ故に政権交代というものは、武力を伴うものでした。というのは、力づくで古い王制を排除するしか方法がなかったからです。封建制度の打倒という革命も、排除の方法としては、基本的に武装を伴うものでした。勿論、議会を承認して、自分たち以外に国家を代表する者に国王が承認するという変革方法を取った国もあります。例えば、イギリス(連合王国)ですね。それとても、長年に渡る闘争の果てに、武力を背景にしたものでした。上部構造の革命は、暴力を担保にしたものであることは、歴史を観察すれば分かると思います。

 

 イギリスは知恵に富んだ歴史を有する国だと小生は思います。マルクスは、当時資本主義が最も発展していたイギリスで共産主義革命が始まると考えていたと思います。しかし、そうはなりませんでした。さて、マルクスの分析によると、資本主義の発展=生産手段の発展は、少ない労働力でモノを生産することが可能になるから、労働者は時代と共に不要となることを示します。失業者の増大は貧困層を拡大するとされます。彼らは黙っているでしょうか? 団結してコトに当たったことは歴史的事実です。イギリスは世界に先駆けて労働者運動が起こった国です。マルクスは、しかし、連合王国では労働者の意志は政治に反映されず、実力でもって支配層である王室、貴族、資本家を吹っ飛ばすしかないと考えていたようです。そのためには労働者の団結、ひいては武装蜂起でその団結の力を見せつけ、「吹っ飛ばす」と。繰り返しになりますが、歴史はそのようになりませんでした。

(続)