戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック (Best solution)
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その昔、経営学、中でも労務管理をやられていたという一時しのぎ氏から、要約するとこんな提案がなされた。

これは、他の皆様方にもあわせてお伺いしますが、本来ならば毎月2億の赤字を出さずに済めば、組織の延命に寄与すると思います。しかし、こと日共に限っては休刊や廃刊をすれば、むしろ党の余命が短くなるような気がします。

もし、PDFみたいな媒体で提供する&購読料自動引き落としというスタイルになれば、取材や編集→配信で終ってしまって、活動の主体的参加者が激減することになります。もちろん、電子媒体であれば、購読者は一方的な情報の受け手にとどまらず、発信者としての役割を生ずるというメリットもありますが、むしろ、そういう情報のインタラクティブな活動は、生身の人間が手ずから行うべきと考えていそうでし、むしろ党中央もヒラも一緒くたの「いち発信者」になってしまうのが、かえって不都合でしょう。だって、「党中央こそが唯一の発信者」でないと困るのが、民主集中制なのではと?


ちぃ〜とばかし、asuke no obasan氏にこのブログの特異性をお見せしようという意図もあって、社会主義、共産主義オタだけじゃないよということで、経営戦略論のグルとして有名なミンツバーグの引用をネタにしようと思う。

「戦略サファリ」は経営戦略論全体を俯瞰する上で世界最高と言われているし実際そうだ(でも10分でわかるたぐいの本ではない。かなり難解だ)。日本共産党に役立つところは、“カルチャー・スクール”と命名されている。
組織文化に着目した研究は、1960年代、スウェーデンで行われた研究が先駆とされている。この研究は80年代まで世界的に注目されることはなかった。それが注目されるようになったのは、この時期の日本企業が大活躍したから。

日本企業の強さを知ろうとした欧米の学者たちは、日本企業は欧米の企業とは全く違った組織文化をもっていると見た者たちがいた。ここに着目したグループをミンツバーグは“カルチャースクール”と呼ぶ(この点、けっこう異論も多いのだが・・・たとえば終身雇用制は日本企業の特徴とされていたが、IBMなど欧米の名門企業も事実上終身雇用だったところが少なくない)

それはともかく、カルチャースクールとはミンツバーグによれば

1.戦略形成は、社会的な相互作用のプロセスであり、組織のメンバーによって共有される信念や理解に基づいている。

2.個人は、他の文化に対する適応(文化受容)や、社会化のプロセスを通して、こうした信念を手に入れる。それは、ほとんどの場合、暗黙裡で言葉を介さないが、時としてより形式的な教義によって強化される。

3.したがって組織のメンバーは、そのカルチャーを支える信念については断片的にしか説明することが出来ず、またその起源や説明に関しても曖昧なままである。

4.結果として戦略は、ポジションというよりも、特にパースペクティブの形をとることになる。そのパースペクティブは、必ずしも明らかではないが、集合地の意図に基づいてており、パターンに影響を与える。そしてそのパターンによって、深く埋め込まれた組織の資源や能力が守られ、競争優位に活用されるのである。したがって、戦略は(たとえ完全に意識的ではなくても)計画的であると説明することができる。

5.カルチャー・特にイデオロギーは戦略的変化を促すことはせずに、むしろ既存の戦略を永続させることを推し進める。そして組織全体の戦略的なパースペクティブの中でのポジションの変更を促す程度にとどまる。

ぶさよ注
パースペクティブとは、人によって用法は微妙に異なるが「基本理念」程度の意味。ポジションとは、この場合はマイケル・ポーターのポジショニング戦略を念頭に置いた表現で、たとえば「先進性と美意識の高い顧客をターゲットにしている」とか「エブリディロープライスで価格競争力で差別化している」とかいった市場の位置づけの意味。

こうした組織の変革は一般に以下のように進む。

1.急進的な変革の前には、組織がもつ信念と環境の特徴との間にギャップが次第に広がっていることが多い。つまり「戦略的漂流」がおきる

2.戦略的漂流は通常、やがて財政的な低下と組織の危機感をもたらす。このような状況下では、以前は疑問視されなかった組織の信念が露呈し、問われる。その結果、組織の緊張感と不統一感が高まり、今までの同質的な信念の崩壊が生ずる。

3.それまでの組織の信念が捨て去られると、多くの場合、組織は混乱期に突入する。この期間、新たな戦略的ビジョンが登場する可能性もある。そして通常は、ビジョンに従って新旧のアイディアが混ざり合い、実験的ではあるが戦略的な意思決定をひとまず完結させる。そして前向きの結果を得られると、新しい物事のすすめ方に対するコミットメントがおおいに強まることになる。

4.前向きなフィードバックは、機能すると考えられる新しい信念に対する、組織メンバーのコミットメントを次第に高めることになる。


しかし、この組織は大変もろい一面を持っている。ミンツバーグは、二点を挙げる

このスクールの一つの危険性は、必要な変化を阻止することができるということである。一貫性のあるマネジメントを好む、言うなればレールに沿って進むのがこのスクールである。カルチャーとは、非常に濃厚で、確立され、あらかじめ定められたものである。

中略

皮肉にも、最初にカルチャーを創り出すこと自体が難しく、あとになって改造するのはさらに難しいが、壊すことはいとも簡単なのである。

もう一つの危険性は、戦略的優位性と組織の独自性が同等であると捉えていることである。多くの場合、他とは違うというのはよいことである。しかし、それは本質的なことではないし、自然にそうなるわけでもない。なぜなら、他と違うということは、ある種の傲慢さを生みかねないのである。

こうやって引用していると、日本共産党の可能性と限界を過不足なく述べているじゃんか・・・さすがミンツバーグだと改めて感心する。

そしてわかること。
日本共産党は新たな戦略的ビジョン構築が必要なのにもかかわらず、まだ組織変革の第一段階にも達していない。そうなる原因は、経営学の素養がある者が共産党を調べたら、100%民主集中制だと断言するだろう。