論戦力 (祥伝社新書157)論戦力 (祥伝社新書157)
著者:筆坂 秀世
販売元:祥伝社
発売日:2009-04-21
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やっとゲトしました。筆たんの「論戦力」で、一読してわかるのは、売れる作りをしていることw。

帯の文句が「手強い小泉純一郎」「訥弁だが説得力のある小沢一郎」「石橋を叩いても渡らない志位和夫」「覚悟のない麻生太郎」なんて言葉が並ぶ。

内容もほとんどが論戦のケーススタディで、タイプの違う政治家を意識して選び、解説している。ケーススタディのいずれも大変おもしろく、政治に興味のある人は読んでおいて絶対損はない。

以前正森成二氏の「質問する人、逃げる人」を読んだことがあるが、正森氏を小結とすると筆坂氏は大関クラスだと言っていい出来だと思う。

ただ、内容がいいだけに、横綱目指して、もう少し厳しい編集をして欲しかったなとは思う。たとえば、志位委員長に触れているくだりをあげてみる。

まず志位和夫を衆議院屈指の論客の一人と紹介。派遣労働の志位質問を例に挙げて数字に強く、論理的に考える能力に優れ、非常に緻密な分析をするのはその通りだろう。だが、それこそが彼の弱点でもあると思う。

いや、弱点についても書いてあるのだ。もう少しはじけた方がいいんじゃないかというのはその通りだろう。だが、そんなこと志位タンに出来るとは思えない。なぜなら、彼は修羅場をくぐってないと思えるからだ。

志位タンが党内で名をあげたのは、例の伊里一智事件における薄汚い弾圧を指揮してからだ。党の命を受け、強い立場に立って弾圧するのは良心さえなければ誰でも出来る。

そしてエリート街道まっしぐら。で、今度は強い立場の不破タンにいじめられて、今はぐうの音も出ないのだw。すなわち志位タンが「石橋を叩いても渡らない」のは、絶対自分が強い立場に立たないと何も出来ないことを意味している。

小泉純一郎は逆だ。弱い立場でも吠え続けた。戦い続けた。だから多くの抵抗も受けた。それも党内から。

小泉純一郎は、自民党の主流派とは思われていなかったし、ちょっと変わった国会議員以上の何者でもないと思われていた。しかし、自分に風が吹くチャンスを逃がさず独力で運をつかみ取った勝利経験があったからこそ、化けたのだ。しかし、そんな小泉でも、自分の時代が過ぎたことを読み切れなかったのが今の状況だろうが、それは横に置いといて、

自分が不利な状況下で戦わざるを得ないとこに追い込まれ、そんな中でも勝ってきた経験が、志位和夫には決定的に不足していると思われる。志位タンは党首になるべきではなかった。むしろ長妻昭のような「専門家」として生きる方が政治家としてよかったろう。

同じことが不破哲三に対する評価にも言える。不破の三段重ねの質問手法は、実は保守系政治家も議会外で使う方法だ。そうした質問手法が悪いとは言わない。しかし、そんな質問手法を使える不破哲三が、なぜ拉致問題の質問でああも醜態をさらしたのか?

強さと弱さは表裏一体なのである。そこを念頭に置いて書いてあったなら、この本、「人を動かす」に匹敵する名著になったと思う。以上、感想おわり。