質問する人、逃げる人?議会(国会)の論戦はどのようにするのか

先日亡くなったばかりの、故正森成二氏の、「質問する人、逃げる人」の簡単な書評を書いておこう。

サブタイトルに「議会(国会)の論戦はどのようにするのか」とあるが、実際はそうした方法を書いている技術論の本ではない。30ページほどの国会の裏話の随筆をいくつか並べた第一章があり、その後は実際の国会質問を並べた本である。

出てくる国会質問は、特に選りすぐられたものだが、もともと弁護士だけあって、法律のからむ国会質問には強さが光る。それに比べて経済や財政分野は少々迫力が不足するが、
それでも十分な下調べをやっておれば十分善戦できることがわかる。ただそれだけの本である。評価・5点満点の3点。ま、その程度の本でも5刷しているんだから、正森氏の人気のほどがわかるけどね。

その程度の本になった理由は、まず第一に著者が病に伏してから書かれた本で、どうしても作り込みが不足していること。本のタイトルの趣旨から言えば、第一章の頁稼ぎのためにあるエッセイなど不要。著者はそれまで多くの本を書いている。議員在職中、もっと早い時期に企画、執筆してもらうべきだった。

第二に、このテーマで作り込もうとすると、ページ数がどうしても多くなる。たとえば論戦のテキストを上段において下段に注釈やエピソード、論戦技法や正森氏のその時考えていたことなどを入れるなんて造りにするのが一番親切だと思うが、そうしたやり方をとると、編集が地獄的に大変になるため、著者も編集者も死ぬ思いをする。例・「町にオウムがやって来た」←これムチャクチャおもろいよ。

第三に採算性の問題がある。分厚くなると、本の価格が2000円以内に収められない。3000円、4000円の本にすることは、セールスの立場に立てば考えられなかったのだろう。個人的には、そうした本を作っておいた方が党内のノウハウ蓄積の意味ではよかったのだろうと思うが、さして販売力の強くない、“民間企業”の清風堂書店にそこまで要求するのは無理だろう。

結論
本来、新日本出版社あたりが後続議員育成のために、採算無視で作るべき本だったのだ。採算無視と言っても日本共産党には、3000人も地方議員がいる。議員候補含めたら一万人くらいはいるはずだから、その中で売れば採算が取れるようにすることもできたはず。