「萩原遼氏の除籍に関する共同アピール

 〜日本共産党の憲法と民主主義に対する敵対を批判する

 日本共産党が元赤旗記者でノンフィクション作家の萩原遼氏の除籍を発表しました。その理由は北朝鮮問題に対する活動や主張が「党の見解と異なる」などとしたものです。

 マスコミ報道によれば、通知文書は、不破哲三議長も出席した先月の在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)のパーティー会場付近で、朝鮮総連批判のビラを配布したことをもって、「党の立場や活動を攻撃している」ことを理由としています。
 6月7日付の通知文書では、2002年9月の日朝平壌宣言以降、萩原氏が元平壌特派員の肩書で「宣言を白紙に戻せ」などと主張したことを「元の肩書を使い、党とは異なる見解を発表することは党員の立場に反する」として、また帰還事業の批判ビラを配布した行為も「党員とは相いれない言動」としました。共産党党規約では、「除籍」は次のように定められています。

 「党組織は、第四条に定める党員の資格を明白に失った党員、あるいはいちじるしく反社会的な行為によって、党への信頼をそこなった党員は、慎重に調査、審査のうえ、除籍することができる」(党規約第十一条)

 党規約第四条では「十八歳以上の日本国民」で、「党の綱領と規約を認め」「規定の党費を納める」限り、党籍を失うことはないとされています。それでは、萩原氏の言動がいちじるしく「反社会的な行為」だとでもいうのでしょうか? 共産党広報部は「個人の党籍や除籍などについては答えられない」と不誠実な回答を繰り返して、党員・支持者・国民に対する説明責任を果たそうとしません。

 共産党の党規約では、「党は、党員の自発的な意思によって結ばれた自由な結社であり、民主集中制を組織の原則とする」(党規約第三条)と定めています。しかし、「自発的な意思」がどこにあるというのでしょうか? 

 民主集中制(正確には民主的中央集権主義)は、ソ連初期の内戦期に、戦争体制下の党防衛のために成立した党システムです。戦時体制下の「鉄の規律」が、平時においても常態化してしまったところに、ソ連や各国の共産党が破綻した原因の一つになりました。すでに民主集中制を定めたこの党規約そのものが前世紀の遺物であり、党本部によるなしくずし解釈の集大成にすぎないものです。

 また「民主集中制」の「民主」とは名ばかりで、「党の意思決定は、民主的な議論をつくし」(党規約第三条)たことは一度もないし、党中央の決定を承認するだけの「選挙」「多数決」「民主主義」しか存在しないことは、すでに私たちが告発し批判してきた通りです。

 「意見がちがうことによって、組織的な排除をおこなってはならない」(第三条)。だから、共産党であっても、意見の相違は許されるといいます。しかし発表すると処分の対象になるのは、いったいどういうことなのでしょうか?

 党で決まった方針とは異なる意見が個人にある場合、党員は個人の生活の中でも「党外に党内の問題を持ち出してはならない」ということで、自分の党とは異なる意見を口にしてはならないのでしょうか。「歌わぬ歌人」という言葉がありますが、「口に出来ない意見」とは果たして意見たりえるでしょうか。

 もっと深刻な例としてはその党員個人が所属する他の大衆団体(例えば労働組合)で決まった方針と党の方針が異なる場合、党員個人はそれでもなお党の方針を優先するべきなのでしょうか。実際にそのように行動して、大衆団体から共産党員が放逐された例は枚挙に暇がありません。これは、共産党が党員に課している規約に現われている倫理が、現実との対峙の中で大いに矛盾することの現われです。そのような規約なり倫理が存在することで、党員が大衆と手を携えることは可能でしょうか。そして、党は大衆と手を携えることが可能でしょうか。大衆が党を信頼するでしょうか。

 話を朝鮮半島の問題に戻します。

 本当に許してはならないのは、萩原氏が文字通り生命をかけて追及してきた、北朝鮮の日本人拉致であり、世襲的個人崇拝に基づいた収容所「社会主義」の恐怖支配体制です。20世紀社会主義の敗北と裏切りを乗り越えて、日本共産党が再生するためにも、萩原氏のような優れた党員ジャーナリストの力が求められているはずです。

 今回の萩原氏の除籍処分は、九条の会をはじめとした護憲のたたかいを自ら裏切り、草の根の民衆の連帯の可能性を踏みにじるものであり、憲法と民主主義に対する重大な敵対行為だといわざるをえません。「行動の統一」とは、異論を排除した上での見せかけの「団結」ではなく、何よりも 様々な言論と行動を前提とした統一であるべきではないでしょうか? それが「国民にたいする公党としての責任」なのです。

 日本共産党が萩原氏への不当な除籍処分を撤回して、民主主義のルールを守る公党としての責任を果たすことを要求します。

2005年6月24日 

■呼びかけ人
 佐野 鷹男(キンピーを応援する会会員・労働者)/寺尾 玲央(キンピーを応援する会事務局・労働者)/西川 智樹(民主団体・自営業)

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管理組合より:当会メンバーより萩原遼氏の除籍問題についてアピールが寄せられたので転載します。転載歓迎です。