6月23日、沖縄慰霊の日
 X同志、ごぶさたしています。

 6月23日はあなたの生まれた沖縄で、組織的戦闘が終結した日でしたね。この日、沖縄守備隊が全滅。午前4時30分、沖縄本島南端の摩文仁ヶ丘の司令部で、第32軍司令官牛島満らが自決、2日後の25日、大本営は作戦を中止しました。

 太平洋戦争で唯一、一般住民が地上戦を体験したのは沖縄だけです。戦死者のうち、約半数に近い、じつに9万4000人余りの戦死者が、兵隊ではない、女性や子どもを含む一般県民でした。

 この「慰霊の日」は、<本土復帰>前は休日となっていたことを、つい最近知りました。1972年の<本土復帰>以後は、日本の法律が適用となり、「休日」としての法的根拠が無くなってしまいました。1991年の地方自治法改正以後は、「慰霊の日」は「休日」になっています。

 今は亡き……もういないなんて信じられない……阿波根昌鴻翁のことばを引いてみます。

 「命どぅ宝(命こそ宝)、これは実に大事なことばである。沖縄戦というこの世の地獄を経験し、そして敗戦後の半世紀、ずっと基地反対闘争を闘ってきて、もう九〇歳になるわしが、生涯をかけて伝えたいことばも、またこれであります」(阿波根昌鴻『命こそ宝』)

 「戦さ世」が続く限り、沖縄の悲劇も終わることもありません。米軍がイラク・ファルージャの虐殺には、沖縄から出撃した第31海兵遠征隊(31MEU)の2100名が加わっていたのです。

 私は、日米軍事同盟である日米安保に反対です。沖縄戦のある限り、ファルージャの悲劇のある限り、この安保に反対します。しかし、沖縄出身のX同盟員がこの場にいたら、どんな風にいうだろう。

 「あんたわかっているの? 沖縄では誰だって反対はしたいんだけどね、でもいま基地に去られると実際困る人も多いんだよ? おまえわかっている? 未来の平和より、明日の生活ですよ」

 X同志のいいたかったのは、左翼や市民運動をくさすことではありませんでした。沖縄の若者は未来を捨てて明日の生活をとったはずなのに、どんどん島を離れていく。このやるせなさ、くやしさ、怒りのぶつけどころのなさがわかるのか? そのことがわかった上での「反戦」「反基地」「反安保」なのか? 

 X同志は民衆の生活とリアリズムに立脚したがゆえに、地元の多くの人々に愛され、信頼される活動家でした。しかし「左翼」「市民運動」の欺瞞や偽善性を鋭く突くがゆえに、一部の人々に疎まれることもあったにちがいありません。

 しかし、同志X。やはり自殺するのは、残されたものとしては、困ったことです。もはや幽霊にすぎぬあなたなど恐るに値しないので、平気でいうのですが、あの沖縄戦においては、「非国民」といわれた人々こそ、じつは民衆の命を体を張って守ろうとした人たちではなかったのでしょうか? チビチリガマの集団自決の悲劇は知られています。しかしその前日、約1千人の住民が避難していたシムクガマでは、ハワイ帰りの比嘉平蔵さんが先頭に立って、米軍との交渉にあたって、全員が助かっています。比嘉さんは、自宅を接収しようとした日本軍に頑として抵抗して「非国民」といわれた人でした。しかしアメリカを自分の目で見て知っていたのです。

 しかし悲劇を招いたのは、皇民化教育を受け入れた「優秀な」人々でした。「アメリカに捕らえられば男は首を切られ、女は犯され腹をさかれる」という風説が、集団自決の大きな引き金になってしまいました。

 X同志。あなたの友人であるキンピー君を支持するのは「反共分子」で、萩原遼さんの除籍理由は、「反社会的行為」を行って党の信頼を著しく損ねたことだそうです。しかし二人とも、せいぜい党の路線と合致しないかもしれない内容も含むビラをまいた程度のことで、共産党の常識は世間の非常識であることを、満天下に示したにすぎませんでした。「合致しないかもしれない」というのは、もちろん、特に民主的な討議など行われた形跡もないし、そうしようという気配もないからです。

 しかしお偉方のいうことならば、その通りだと考えてしまう人たちもいるでしょうね。まじめで熱心な人ほど、きっとそうです。今のこの党のやり方というものが、「おまえらそれでも日本人か、アメリカの捕虜になって恥ずかしくないのか」と民衆に手榴弾を投げつけた醜い日本軍に重なってしまうのです。同志X、あなたはどう思いますか? 私なら、「そんなに死にてえのなら、てめえらだけで死にやがれ」と手榴弾を投げ返すことでしょう。しかしあなたは日本共産党を心から愛するがゆえに、これ以上党の罪を拡大しないために、自分ひとりで一切を引き受けてしまいました。まったく、勝手です。それについては、小一時間ばかり問い詰めたいと思います。それまでどうぞお元気で。

   戦さ世しんまち      いくさゆんしんまち
   みるく世ややがて     みるくゆややがて
   嘆くなよ臣下 命どぅ宝  なげくなよしんか ぬちどぅたから

   戦世は終わった
   平和な弥勒世がやがて来る
   嘆くなよ、おまえたち、命こそ宝


【参考文献】
『命こそ宝 沖縄反戦の心』 阿波根昌鴻(岩波新書)
『日米安保を考え直す』 我部政明(講談社新書)
「しんぶん赤旗」2004年11月28号
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik3/2004-11-28/01_01.html