5月7日は、コナモンの日。

 タコヤキスト・熊谷真菜氏の主宰する日本コナモン協会が2003年に制定した。「5・7」と「コナ」の語呂合せ。
 たこ焼き・お好み焼き・うどん・やきそば、粉を使った食品を、関西弁では「コナモン」という。今日も各地でさまざまなイベントが行われている。

▽日本全国コナモンまつり2005
http://konamon.com/pr/2005konamon_matsuri/20050507event.html

 たまには社会科ばかりでなく理科にも挑戦してみよう。以下、粉体工学の権威で、鳴き砂保護でも知られる三輪茂雄博士のサイトによる、「革命的コナモン学入門」である。どのへんが「革命的」かは最後まで読むように。

 気体・液体とならんで「粉体」という物質の状態が大切だと指摘したのは、物理学者の寺田寅彦である。では、液体と粉体はどのようにちがうのだろう? 実験で確かめてみよう。
 実験の舞台には、大阪の赤字3セクバブルの塔、WTCを有効に活用することにしよう。WTCの高さは西日本でいちばん天国に近い256mである。高さ 250m、内径27cmのまっすぐな鋼鉄のパイプを垂直にとりつける。テナントもがらあきで、市役所機能しか入っていないから支障あるまい。五輪招致で荒稼ぎしたゼネコンもセメントというコナモンを扱う以上は、超過利潤の社会的還元のために無償で協力させよう。このパイプ鋼管の底には、まんなかに直径 5cmの孔をあけた鉄板を熔接する。この底の孔には、ふたとしてゴム栓をしておく。

 さあ、上からパイプに水を流し込んでみよう。ゴム栓には30気圧にも達する水圧がかかる。ゴム栓はたちどころにものすごい勢いでふっ飛び、約15トンの水が猛烈な勢いで噴き出すことになるだろう。これぞ役人天国に対する、天の罰、民の怒りというものであろう。

 では次に、水の代わりに粉体をつかって実験する。たとえば古米をつかってみることにしよう。米粒の水に対する比重が0.8として、この鋼管には古米が約12トン入る。

 さあ、どうなるだろうか? 連合系の大阪市労連の幹部に、「おまえ、ゴム栓飛ばんようにしっかり押さえておけや、ヴォケ!」とゴム栓を押さえさせることにする。何が起こるだろうか?

 さすが暴力集団キンピー一派、おまえらの考えることは、ざんこくだって? 安心してよい。しかし何ごとも起こらないのである。ゴム栓は安全だし、ゴム栓がなくても手のひらで孔を塞いでいるうちはだいじょうぶなのだ。不思議なことに、水圧と粉体圧は全くちがうのである。

 このような粉体圧の計算は、「ヤンセンの理論式」で求められる。この場合、手のひらにかかる全圧力はせいぜい400グラムにすぎない。では12トンの重量はどこで支えているのか? パイプの鋼管の壁が支えているのである。米のような粉体は摩擦係数が関係するが、水には摩擦がない。それが液体と粉体との大きなちがいなのだ。

 直接かかる圧力が400グラムなら、子どもでも支えられるだろう。しかしこのWTCの実験は、子どもには絶対にやらせてはいけない。カラ残業やヤミ手当に反対してきたわが全労連系の市労組も免除すべきである。

 いまのべた圧力は、あくまでも「静圧」の話である。何かのはずみで、パイプのなかの米粒が動き出したら、大変なことになる。爆撃音のような轟音がとどろき、地震のような地ひびきをたてで、WTCは鳴動し、底の孔はあき、鉄板もふっとぶだろう。ひとたび粉体が流動をはじめるや、250mの粉体柱は死と崩壊のピストン運動を開始する。これをマスフロiー流といい、専門家でも予測もつかない状態だといわれる。死人が出るかも知れないし、WTCも倒壊するかも知れない。

 さて、群衆工学といわれる研究分野がある。これも流体工学の応用である。皇居の新宮殿の造営の際には、参賀の人波の対策を考えた対策を考えた設計がなされた。このとき参考にされたのが、水量を調節するダム設計の技術である。群集を流体に見立て、「人間の洪水」を防止するための設計がなされているのだ。
 
 しかし、群集は水のような連続体ではない。ラッシュアワーの駅の改札口や、電車の入口では、人と人とが押し合い、前方が空いているのに進めない現象が起きる。群集がパニックを起こして出口に殺到すると、玉突衝突のような密集が現れる。これは液体流体では見られず、粉体流体だけに見られる現象である(砂時計のくびれの部分を観察するとわかりやすい)。このような密集体を、ダイナミックアーチ(動的架橋)と呼んでいる。次々に人がいれかわるが、この人垣を無理して通り抜けないことには前に進めなくなってしまうのだ。

 この人垣のアーチが崩壊するときのショックで、大きな振動が発生して、大事故に発展することがある。最近では160人の死者を出した明石市の花火大会事故が記憶に新しい。1954年の二重橋事故、1956年の弥彦神社事故、1967年の大阪造幣局の桜の通りぬけの惨事などの群集事故は、いずれも狭い入口や階段で、身動きのとれないアーチが形成されたことが原因になっている。

 群衆のパニックは、人間の集団に現れる衝撃波現象である。しかし避難訓練のように、事前に緊急事態を通知されている集団には、パニックは起こらない。情報の伝達よりも、人の動きが速いとき、組織は自己崩壊を起こす。情報の公開、迅速性こそが、組織の生命であろう。

 より高い圧力をかけると、より速い速度を誘発するのがショックウエーブのメカニズムである。さて、コナモン王国大阪西成から始まった衝撃波が、どんなアーチをえがき、どんなマスフローを引きおこすのかは、まだ予測がつかない。しかしかくも大阪のコナモンの奥は深いのである。


【参考サイト】
▽タコヤキスト・熊谷真菜氏のページ「日本コナモン協会」
http://konamon.com/main.html
▽粉体工学・三輪茂雄博士のサイト
http://www.bigai.ne.jp/~miwa/
【参考文献】
『ショックウェーブ』 高山和喜(オーム社)