こちらで、元労組幹部、KM生、大宰ファン各氏の、バトルと言うほどでもないが古い時代の共産党員の学力と健康についての議論が続いている・・・・私としてはこんな連載を取ってきた赤旗日曜版編集部を話題にして欲しかったのだけど、どこに議論が飛んでいくのか分からないのは当blogの特徴なので仕方ない。

なので、ネタとして某所で発表予定の文書を投下する。
議論の参考にはなるだろうw


 
戦前共産党員の学力と健康

戦前の、そして戦後しばらく共産党には俊英が集まっていたのはよく知られている。どれほど頭のよい人たちがいたのか、戦前、司法省が逮捕者の身上調査をしたことがある。まず学歴から見てみよう。昭和四年(二次共産党崩壊の4・16事件の年)に発行された司法省韜晦研究第4巻6号によれば、

高等教育を受けた者 28%
中等教育を受けた者 17%
初等教育を受けた者 55%

当時、義務教育は6年の初等教育(小学校相当)だけで、中等学校の修学期間は5年間、高等学校は3年から5年、大学は3〜4年であった。当時の進学率は昭和15年の数字で、中学だけなら7%。高等女学校なども含めた高等教育進学率25%といったところ。旧制高校に入ると自動的にどこかの帝国大学には入れるようになっていた。昭和四年に20歳となる明治42年の出生者は169万人で、乳児死亡が28万人いるので実際は140万人程度。大学の定員は8万人だった。就学期間三年のケースもあったことから大学の一学年の定員は2.5万人ほどと推定される。ここから進学率を逆算すると1.7%ほどになる。昔は大学卒が小学校の教室で1人か2人出るかどうかと言われていたのもうなずける。
そんな時代のデータとしては、高等教育を受けた者が28%というのは、さして大きな比率に見えない。しかし昭和二年に日本共産党はコミンテルンからインテリが多すぎなので、もっと労働者を入党させろと指令を受けている。二年間の間に労働者をたくさん入れたため、この数字になっていると司法省は考えていた。たぶん司法省の推定は間違っていないだろう。すなわち、もともと高等教育を受けていた者がやたら多い組織であったということだ。
とはいえ、どれだけ俊英が集まっていたかは、むしろ高等教育を受けていない人を見た方が良い。当時の高等教育は、学生の頭の出来以上に親の経済力がなければ進学することはできなかった。貧乏な家に生まれれば、どんなに頭がよくても進学など出来ない。そんな貧乏人の家庭に生まれた共産党員の学力も高かった。同じく司法省の調査結果を見てみよう。

中等学校程度以下の学歴を有する者の学力(256人の調査結果、100点満点)
優(80点以上) 113名 44.8%
良(70点以上) 81名 32.5%
可(60点以上) 45名 17.9%
劣(60点以下) 11名 4,8%

トップクラスの成績である「優」が44%もいる。「良」も含めれば実に4人のうち3人が優等生レベルの成績である。偏差値を使う時代ではないから、今の偏差値による区切りと直接比較は難しい。しかし現代の高校生で優等生レベルの学力なら、普通にMARCH、関関同立くらいの大学には入れるだろう。そう考えれば、「優」の44%は、今の基準ならMARCH、関関同立クラスの大学には入れる程度の学力を持っていたと見ていいのではないだろうか。

党員の年齢は20代が多く、26歳が最も多く60人。10代は17人、40歳以上は3人で、圧倒的に若い。そして興味深いのは健康状態の調査だ。

健康者 285名 60.5%
虚弱者 75名 18%
疾病ある者 111名 21.5%

病気にかかっているのが多いのは、今のように医療が進んでいる時代ではないので致し方ない面がある。疾病を持つ者のうち43名が肺系統の病気にかかっている。ほかは神経衰弱8、心臓病7、脚気10、花柳病(梅毒など性病)5、痔疾7、胃腸病22、その他9である。特に肺病が多いのが目を引くが、当時、肺病患者には過激思想を持つ者が多いということで特に警戒されるデータになったようだ。
今のようによい薬がない、あってもきわめて高価だった時代、結核などにかかると命を落とす人も多かった。そんな時代、どうせ死ぬならやりたいことをやって死にたいと自暴自棄になる人もいただろう。そんな、特高警察などから潜在的脅威を持たれる人が二割もいたと言うことである。

学力が高く、それでいて自分の将来を悲観している・・・そんな連中が、いつ警察に捕まり、拷問されるかわからない中、命を賭けて革命を目指して活動している・・・そんな者たちががこれだけいた。
オウム真理教も高学歴の信者が多いと言うことで話題になったが、オウムで非合法部門に携わっていた者はそう多くない。ほとんどの信者は非合法活動のことは知らなかった。これに対し、戦前の共産党は全員が非合法活動をしている自覚があった。戦前の政府から見た共産党は、現代のオウム真理教などとは比較にならないくらい恐怖を与えていたと言っていいだろう。