「反安保法制・反原発運動で出現---シニア左翼とは何か」小林哲夫著・朝日新書読了。SEALDs界隈に関心のある人は必読本だ。

現場を見ている人ならみんな知っているが、SEALDsは若者より年寄りの参加がやたらと多い。そんなSEALDsの運動の陰の主役たちであるシニア左翼をメインテーマに据えている。

どんな年寄りが参加しているのかあっちこっちにインタビューしまくって年令層や出自(どんなセクト出身かとか、関係ないとか)別に分類しつつ、その全貌を見せようとする。

内容自体は硬派だ。著者が運動史の知識のある方なのは読んでいけばわかる。インタビューひとつにしてもデモや集会の参加者に話を聞くだけでなく、新左翼セクトの本部に乗り込んで幹部たちにSEALDsの感想を聞くなんてことまでやっている。

しかし読者が最初に思うのは、出てくるエピソードが現場にいてこそわかる面白さに満ちていることだろう。本のスタートは2012年6月から7月、大飯原発再稼働反対集会での出来事。じーさんが別のじーさんを見つけて「お〜おまえ生きてたのか!」的に、集会がかつての学生運動の闘士たちの同窓会の様相を呈していたとか。

昨年8月30日の国会前大集会。血気盛んに過激に走ろうとする、往年の闘士であるシニア左翼がSEALDsの20代の女の子に「暴力はやめてください」と説教されて言い返せなくてシュンとしていたとか。

あるシニア左翼は高齢で体の調子が悪くなった。すると警官が心配そうに寄ってきて「大丈夫ですか?」と声をかけてくる。自分たちの若い頃と言えばこうした集会の参加者にとって警官ば敵だった。なのに今は心配して声をかけてくれることに衝撃を受けたとか・・・そんなエピソードが楽しい。


第二章からはSEALDsがなぜシニア左翼を熱狂させるのかということで、ベ平連やウーマンリブ運動などと似ていたり違っていたりしているところを分析する。三章は学者や作家に与えた影響などを考察する。しかしそしておそらく誰もが認めるこの本の最もスゴいところは第四章の世代別シニアの傾向についての調査だろう。

シニア左翼は見た目はみんなただのジジババのように見えるが、世代によって考えが相当に違う。世代だけでも上から下まで30年離れているのだ。もちろんかつて党派に所属していた、今も党派に所属している場合もそうである。

意外なことも書いてある。SEALDsが排除していた中核派など、SEALDsをあしざまにののしっていてもおかしくない。なのに実際にはかなり高く評価していたりする。そして最後にあるシニア左翼はこれからどうなるのかの予想を読んで、読者はSEALDsの果たした役割の本当の大きさを知るだろう。


もっとも、ここをもうちよっと突っ込んで欲しかったと思うところもないではない。個人的にはSEALDs界隈をうろちょろすることが少ない年代が、シニア左翼をどう見ているのかについて言及が少ないのが気になった。具体的には30代から50代の、学生運動低調の時代の運動経験者たちだ。

この年代の活動家は何をやってもうまく行かなかった時代の人たちなわけで、彼らがシニア左翼をどう見ているのか・・好意的にしろ、そうでないにしろ、そうした世代の意見を聞くことで見えてくる部分もあったと思う。それとSEALDsに興味を持たない、ないしは反発している現役大学生や20代の若者の中で政治意識の高い人の見方も知りた知りたかったと思う。

なんて文句をつけてはみたものの、この著者の前著「高校紛争」にも見られる、ターゲットを決めたら偏執狂かと思うくらい文献から何から調べまくる姿勢は、下手にマスコミでは絶対真似できないクオリティを生み出しているのは、読めば誰しも認めるところだろう。