以前、国道134号鎌倉さまからこんな質問をいただいた。

ぶさよさんの説明では財界が消費税増税に固執する利点はないと思いますが、なぜ財界は消費税の税率引上げにこだわるのでしょうか。

ということで返答させていただきますが、税に関しては素人なんでその点は割り引いて読まれるように.....

結論を先に言えば、消費税を増税しなければ日本が破綻すると考えているからです。

まず、消費税が導入される前の事情から。

日本の個人所得税は累進課税となっています。所得が大きいほど税率が高くなっていたわけですが、昔は最大75%。これに地方税を含めると所得の85%に課税されました。1億円の所得があっても、実際の収入は1500万円でしかなかったのです。

これはあまりにひどいということで、徐々に累進率は引き下げられて地方税含めて50%まで下がりました。所得の50%とは、江戸時代で言うところの五公五民状態。四公六民が五公五民になったら一揆が増えたと昔習った覚えがありますが、江戸時代の重税くらいの重さになったわけです。

この、所得税率低減とともに進められたのは、物品税など一部の税が廃止されたり、削減されたりしました。おそらく私たちにとって最も生活を変えたのは、自動車税の3ナンバー車の税率引き下げでしょう。これがなければ、今のように3ナンバーのクルマが町に溢れることはなかったでしょう。
なぜ金持ちからもっと多くの所得税を取らないのか?

累進税率が高くなってしまう上に、とったところで知れているからです。資料が手元にありませんが、現在、年収一千万以上の人は5%ほどのようです。これが最高税率を適用される1800万円以上となると、多くて2%ほどだと思います。昔の最高税率の基準であった8000万円以上の収入になるとせいぜい2、3千人程度でしょう。1億円を3000人からとっても3000億にしかなりません。

また、金持ちがいなくなると、文化面での不都合が出てくることも指摘しておかねばなりません。金持ちがいなければ維持できない文化もあるのです。

企業はなぜ法人税減税を求めるのか

また税金に取られるカネを人件費や内部留保、投資などに回したいからです。たとえばハイテク関係の会社を例にあげましょう。液晶、燃料電池など、ハイテク関係の投資は、今ですら大企業一社単独では難しいものが多く、実際にライバル同士が資金を出し合ってやっと投資が可能となるという場合もけっこうあったりします。

よい人材が欲しいと思えば、少しでも高賃金を払いたい。いつどうなるか分からない市場環境で安全性を高めたければ内部留保もため込みたい。

税金が安いと競争力の維持もしやすいものです。税金の高い国ではそれだけ企業にカネが残りませんから同程度の実力をも持っていても税金の安い国に立地しているほうが強くなります。

たとえばこれは税金ではありませんが、ビッグスリーの経営危機の一因として企業が払う医療保険の支払いコストが厖大になっていることも指摘されています。アメリカに工場を持っている日本企業は、歴史が浅い分医療保険コストが低いのですが、今後はビッグスリーと同じく医療保険の重圧に怯えなければならなくなってくることに危機感を持っています。税金が増えるということは、それだけ企業負担が増える。企業負担が増えると企業の競争力が落ちる。これは純然たる事実です。

消費税の性格
消費税は、モノやサービスの取引を行うとかかる税金です。そのため所得税と較べて隠しにくく、税務署としても捕そくしやすい性質を持っています。また、納税者としても所得税よりも「取られた」感が少ないようです。

300万円の消費を行うところに10%とれば30万円。300万円の消費をする3000万人から取れば9兆円。金持ちからとるよりも遥かに多くの税収になります。

ただ、消費税の無視できない性格として、逆累進性があります。所得税の場合は、所得の低い人にはかからないわけですが、消費税の場合は所得に関係なしに一定にかかります。そのため、所得の低い人ほど重税感が出てくることになります。

そして、こうした考えは、多くの日本人に共有されている。そして国民の意思として、日本の財政危機を救う選択肢として、消費税増税が有力となっているわけです。そのため、財界も主張しやすいと言えるかも知れません。