きょうのしんぶん赤旗の井上ひさしの後援会について何か書こうとしていたら、栗原幸夫氏のこんな文書が見つかった。特にここに注目

「新憲法」のなかでただ一つ、厳密に「現実」を反映した条項があった。それが第九条である。あれはイリュージョンでも理念でも目的でもない。現実そのものの単純な追認なのである。あのとき、日本にはいかなる軍備も存在しなかった。あのとき、もう一度戦争をやろうなどという気力をもっている日本人は、ただの一人もいなかっただろうと思う。これは「現実」なのである。だから「現実」に批判的な共産党の野坂参三だけがラジオ討論会で、「軍備のない独立国なんか存在しない」と「正論」をかかげて第九条に一人反対していたのが、昨日のことのように記憶に残っている。

中略

「九条を守れ」というスローガンは、正確に言えば、それを「夢」として語るのではなく、いま、ここでの課題として、それにふさわしい具体的な内容にするということである。それは理念であると同時に、現実的な経済構造の再編成であり、社会・政治制度の改編であり、文化の革命(つまり生活の革命)を不可欠とする全体的な構想の問題なのである。もっとはっきりと言おう。それは国家の死滅の決定的なプロセスなのである。
 その理解ももたずに九条を守れなどということはもう言うな、などと言ったら、また年寄りの妄言と顔をそむける人が多いだろうな。

共産党が隠したい野坂三蔵の過去がまた明らかになったが、それにしてもため息がつくほど、すげぇエッセイですな。自称作家兼ルポライターに爪のアカを飲ませたいねぇ。