都議選関連で浅野氏を批判する日本共産党に、多くの左翼たちが反発を持っているのはブログ巡りをしているとよくわかるが、現在、この主張があちこちで話題になっている。転載自由だと言うことなので、転載させていただこう……見やすくするため、少しリンクのトコ加工するけど


共産党の「浅野批判」が選挙が迫るにつれ、一段と激しくなっています。しかし、その共産党の「浅野批判」は、統計指標を歪曲してつくりあげた、いわばでっちあげた「事実」に基づく批判というべきであって、それはもう「批判」という名にも値しないしろものといわなければなりません。きわめてアンフェアなものです。

これまで共産党が「反共主義者」等々に対して批判してきた同じ手法を今度は共産党自身が用いているのです。共産党には真摯に反省していただきたい、と私は思います。共産党はその反省ができる「党」であるはずです。

以下、例証を示します。

(1)「しんぶん赤旗」、2007年3月2日記事

この日「赤旗」は、「政治の中身は自民党より自民党型」と浅野前県政を厳しく批判する志位委員長の見解を発表しました。この日は、浅野史郎氏が東京都知事選に事実上の出馬表明をした日でもあります。

上記で志位氏は、浅野前県政は、「福祉切り捨てではそれまで以上に冷酷さが際立った」と糾弾し、その「冷酷さ」の例として、「前県政では国保証取り上げがゼロだったが、〇五年には二千三百三十世帯になった」と述べました。

そして、「こうした政治は、石原都知事が革新都政時代につくられた福祉の施策を根こそぎ切り捨て、巨大開発に湯水のようにお金を注ぎ込んできたものと同じ中身だ」と浅野前県政を再び糾弾します。

(2)「しんぶん赤旗」東北版、2003年3月8日付記事
志位氏は上記でも同じようなことを述べています。すなわち、「国保証の取り上げも、ずいぶん冷たいやり方をやっています。(略)短期保険証が七千五百八世帯、資格証明書が九百四十七世帯。この一年間で資格証明書は二十六倍です」と。

事実はどうか?

上記の記事(志位氏の記者会見と演説)の根拠となったと思われる数字が以下にあります。全国保険医団体連合会(略称、保団連)が厚生労働省調査をもとに作成した「被保険者資格証明書交付世帯数(市町村国保)」。

被保険者資格証明書交付世帯数(市町村国保)

作図


クリックしたら拡大するよん……busayo_dic注

まず(1)について。志位氏の言う「国保証取り上げ」とは上記資料の「被保険者資格証明書交付世帯数」のことを指しているでしょう。同資料の宮城県の05年「資格証明書交付世帯数」2330件と志位氏のいう「〇五年には二千三百三十世帯」は一致します。そうであれば、次のことがいえます。

宮城県の2000年度「資格証明書交付世帯数」0件は浅野県政の時代の
ものであり、「前県政」のものではありません。浅野県政は1993年の初当選から3期目任期満了で退任した2005年11月20日まで続いているのですから、2000年度0件の当時は浅野県政2期目のことになります。「前県政では国保証取り上げがゼロだった」という志位氏の発言は明らかに誤りであり、その誤った前提でもって「福祉切り捨てではそれまで以上に冷酷さが際立った」とまで断罪する。あまりのことだといわなければなりません。

次に(2)について。志位氏は「この一年間で資格証明書(注:国保証の取り上げ)は二十六倍」。「ずいぶん冷たいやり方」です、とここでも浅野前県政を断罪します。

しかし、東北6県のうち同じ時点で秋田県は40倍、岩手県は24.6倍、青森県にいたっては1981倍。表を見れば、 2002年度には、東
北6県のすべてで「資格証明書交付世帯数」が前年度より急激に膨張して
いることがわかります。また、前年度の実績との比較で膨張率も異なることがわかります。なぜ、ことさら浅野前県政のみが非難されなければならないのでしょう? 共産党の為に(下心があって)する「浅野県政」批判といわなければならないでしょう。

(3)「しんぶん赤旗」東北版、2003年3月8日付記事
「総務省が出している『統計でみる県のすがた』という行政水準の比較があります。私は、東北六県の比較をしてみました。そうしますと、宮城県は一人当たりの住民税は、六県中一位です。みなさんは一番税金を払っていらっしゃる。これは、ぜひ覚えておきたいことです」(志位委員長)

ここにもまたまやかしがあります。志位氏は、「宮城県は一人当たりの住民税は、六県中一位です。みなさんは一番税金を払っていらっしゃる」と言います。

ほんとうにそうか?

下記は、『統計でみる県のすがた』に見る東北6県の住民税の1990年度から2000年度までの5年単位の推移です。上記の志位氏の発言は2003年2月のものですから、志位氏が参考にしたのは下記のうち2000年度の住民税の数字でしょう。

人口1人当たり住民税(単位:千円)

     1990  1995  2000
青森     55.4   61.0   61.3
岩手     59.4   65.9   65.4
宮城     86.1   88.0   81.8
秋田     56.9   63.8   61.2
山形     64.0   68.9   67.3
福島     70.6   72.5   69.6

上記の表を見れば、確かに宮城県の住民税がダントツに高い。東北6県のうち宮城県の住民が「一番税金を払って」いるということはいえます。しかし、ご承知のとおり、住民税は均等割と所得割とからなっており、そのうち均等割の税率は全国一律です。宮城県が特別高いというものではありません。また、所得割の標準税率も全国一律であり、これも宮城県が特別高いということはできません。

ではどうして宮城県の住民税がダントツに高いのか? いうまでもなく、東北6県の中で宮城県の個人所得水準が一番高いからです。所得割の税率が全国一律であるならば、個人所得水準の高い県の住民税が高くなるのは道理です。それを志位氏は、「みなさんは一番税金を払っていらっしゃる」と、あたかも宮城県の税率が他の東北5県に比して一番高いかのように言う。これも為にする「浅野県政」批判というべきです。

(4)同上

また、上記の演説で志位氏は、宮城県の「一人当たりの民生費、つまり福祉費は六位、最下位です」とも言います。これも事実とは異なります。事実は下記の表のとおり、宮城県は2000年度で民生費割合2位の位置をキープしています。

民生費割合(単位:%)
(民生費=社会福祉費+老人福祉費+児童福祉費+生活保護費)

     1990  1995  2000
青森      6.50     6.32     7.46(1位)
岩手      6.00     5.44     6.17(5位)
宮城      5.11     5.19     7.13(2位)
秋田      6.42     6.30     6.74(3位)
山形      4.50     4.82     5.65(6位)
福島      4.40     5.72     6.70(4位)
※カッコ部分は便宜のため筆者が挿入しました。

(5)同上
さらに、上記の演説で志位氏は、宮城県の「教育費も六位」と浅野県政を批判します。しかし、これも違います。宮城県は、教育費については「六位」どころか、
1位です。

教育費割合(単位:%)

     1990  1995  2000
青森     25.31  23.50  19.47(5位)
岩手     24.92  22.41  19.98(4位)
宮城     25.43  25.11  26.37(1位)
秋田     21.08  19.09  18.04(6位)
山形     22.24  19.32  20.34(3位)
福島     25.60  25.19  24.66(2位)

(6)同上

衛生費についてはどうか? これも事実とは異なります。「六位」ではなく、5位です。もちろん、5位だからよい、という話ではありません。批判は正確な事実に基づいて行うべきだという延長の話として「六位」と5位の違いを問題にしているのです。


衛生費割合(単位:%)
     1990  1995  2000
青森     3.10   3.05   2.92(4位)
岩手     4.37   5.17   4.52(1位)
宮城     2.73   2.54   2.27(5位)
秋田     1.90   4.37   2.15(6位)
山形     3.45   4.19   3.97(2位)
福島     2.61   3.13   3.21(3位)

以上、上記「赤旗」記事中、福祉費に絞って事実関係を見てみました。上記に見たとおり、事実に基づかない共産党の「浅野批判」は目を覆うばかりのものです。共産党とは、正確な事実関係に立脚して理論を構築する政党ではなかったのか? 私たちは、共産党への支持、不支持に関わらず、そうした信頼感だけは共産党に対して抱いていました。それがどうしたことか?

私は、改めて共産党に反省を促したいと思います。もう一度繰り返します。共産党はそうした反省ができる「党」のはずです。その上で、共産党はいま、「石原3選阻止」のために何をなすべきなのか。そのことを真剣に問い直していただきたいと切に思います。まだ遅くありません。まだ時間があります。いま、「石原3選阻止」のために何をなすべきなのか、を再度検討していただきたい。是非。