以前、しんぶん赤旗「おはようニュース問答」で酷評されていた映画「亡国のイージス」実際に見てきたので、ちょっと書いてみる。結論から先に言えば、作り込みには今一歩の感があるが、日本映画としては歴史に残るエポックメーキングな作品だと言っていいのではないか。赤旗ご推薦の「ローレライ」を見てスカポンタンと思った人は、ぜひ見るべし。今度は裏切られたとは思わないだろう。

まずテクニカルの面から。原作が膨大なので、いくつかの改変はもちろんなされているが、それでも2時間半によくぞまとめた!これは原作という「予備知識」のある人なら、間違いなく認めるだろう。予備知識のない人から見ると、細かい部分でわかりにくさは残ると思うが、ストーリーを追う上で障害にはならないだろう……たぶん(^^;。ただ、個人的には、CICから潜水艦に送信するシーンだけは、最初わけが分からなかった……つーか、どうして潜水艦の存在と作戦を知ったのだ?どこか私が見落としたのか?
ストーリー面。しんぶん赤旗は、自衛隊の全面協力があったことに嫌悪感を示していたが、イージス艦最初に威容がクローズアップされるものの、それほど存在感を強調したつくりになっているわけではない。ストーリーはあくまで人間ドラマだ。マシンと化した如月とヨンファ、マシンであろうとした宮津以下のメンバー、そこに一番人間くさい真田広之扮する仙石が立ち向かう。原作のよさを十分に意識した内容だと太鼓判を押していい。

赤旗が指摘する、「戦えない自衛隊でいいのかとあおる」なんてところは全くない。強いて言えば、中井貴一扮するヨンファのセリフの数々だが、それにしても日本は守るべき国なのかいうテーマのからのセリフと見るのが自然だ。ましてや何が「戦争ごっこ」か……現代アニメ語を終戦直前の潜水艦乗組員にしゃべらせる赤旗オススメ「ローレライ」の方がよほど「ごっこ」である。

ただ、以前書いた「おはようニュース問答」とは別に、赤旗ご用達映画評論家がストーリーに関する自衛隊の介入があったと書いていたが、その痕跡は確かにありそうだ。この評論家は、艦長が叛乱に加担する部分を改変したことを書いていたが、その程度のことは問題にはならない。防衛庁がストーリーに介入したと思える部分で、最も重要な改変があるとすれば、それは政府側にたつ佐藤浩市扮する渥美が善人に描かれていたことだろう。原作では、もうちよっとワルの役だ。そして、それが伏線になって最後に原田美枝子扮する宮津の妻との場面がラストにきて、それこそ世界の映画史上に残るであろう美しくも残酷な、そして平和とは何かを問うワンシーンがあったはず。そこを突っ込まずして何言ってんだか……。

ま、しんぶん赤旗読者には、実際に映画を観て、原作も読んで、赤旗の言い分の是非を判断してもらいたいものである。